昭和後半(戦後)の日本文学にあって、もっとも間違いのない日本語を駆使した小説家の一人として、高井有一を尊重してきた。私にとっては、お手本の一人である。が、歴史的仮名遣いをされたから、お若いかたすべてにお奨めいたす気はない。かつてその全著作を蒐集しえたことは、古書店散歩者としての、私の誇りでもある。ほとんどにグラシンをかけてあるため、写真映りは悪いけれども。 断捨離というものは、不要の品を選別する料簡ではいっこうに進まない。本丸もしくは他に換えがたい領域にまで手を突っこまなければ進捗しない。解っちゃいるが、自認するほどの未練な性格だから、容易ではない。思い切って、古書肆に委ねるについては、逡巡し…