今回の授業では、札幌農学校で学んだ農業理念を自ら実践するべく国の農業指導者として僻地に入った人物を取り上げた。その僻地の開拓農家から出た文学者が、北海道文学館の初代理事長である。彼は晩年に自己の若き人生を自伝的小説として残しているのだが、当然、当該農業指導者についても記しているわけだ。また彼はその農業指導者の娘に身分違いの恋心を抱き、後半のシリーズはそれがひとつのテーマとなるため、なおさらその農業指導者の描写が濃くなってくる。勿論自伝的小説はフィクションなので名前なども本名ではないが、そのモチーフとして個人が浮かび上がってくる。また、当時の道東最奥部における開拓の様子が描写されており、これは具…