(うゆうげ)1932年(昭7)春陽堂刊、日本小説文庫1。タイトルの意味は「憂いのある花」のようなことで、物語の中心となる三人の女性のそれぞれの愛の不幸をかこつ姿を描く。菊池寛は頭脳明晰な人だったと言うが、感情の起伏や心理の変化を登場人物ごとに巧みに書き分けている。特に会話の中での無言「・・・」の表記は言葉を超えた感情の深長さを示すのには効果的。大正から昭和初期にかけて舞台化や映画化もされた話題作だった。☆☆☆☆ 国会図書館デジタル・コレクション所載。挿絵は寺本忠雄。 dl.ndl.go.jp