1930年(昭5)新潮社刊、「長篇三人全集第5巻」所収。 加藤武雄(1988~1956) は新潮社で文芸誌の編集に携わった後に作家生活に入った。昭和の戦前、戦中、戦後を通して、それぞれの時勢に合わせた作品を書いた。純文学者か通俗作家かをしいて区分する意味はないと思われるが、彼はその豊満な筆力と巧みな構成力とで、多くの長篇小説を残した。昭和初期には新潮社から「長篇三人全集」と銘打って、当時人気のあった三上於菟吉、中村武羅夫とともに全28巻を分担して出している。 東京の女学校に通う三千代、幸子、初子の仲良し三人組は卒業を前にして今後も一生の間親交を保ち続けようと誓う。しかし三千代はいきなり田舎の実…