南が5年生の時の会話。 「”悲しい”ってなんか足りない気がする」 南が学校から戻ってシャワーを浴び、タオルで髪の毛をふきつつリビングに現れた。 「どういうふうに足りないの?」 おやつの準備をしつつ話相手になる。 「よくわからないけど、野球でいうと1か所しか守れないかんじかな」 「オールラウンダーじゃないってことね。言葉として不完全だって言いたいのね」 おやつのおにぎりと牛乳をお盆に乗せてカウンター越しに南に渡す。 「うーん、だって金魚が死んでも悲しいだし、じいちゃんが死んでも悲しいだし、わかってもらえないことがあっても悲しいで、練習が雨で中止になったら悲しいし、モスラが死んだときも悲しい、お金…