買ってきたばかりの出来立てのパンを袋からテーブルに広げた瞬間、我が家は幸せな気分になる。 あるとき、友人夫婦が数十年にわたり営んでいるフランス料理屋でその話を持ち出すと「おいしいパン屋さんはその瞬間を想像しながら作っているのよ」と、シェフの奥さんが話してくれた。 走り出して間もなく、唐突にそんな話を思い出す。よしっ、今日のお昼はパンにするのだと、心に固く誓う。時間はたっぷりあるのに、カラダの軽さと空腹感が思春期のように焦りを引き出す。 目線を降ろすとNIKEのランニングシューズの紐が少し緩んでいる。結び直す時間も惜しい。ジョギングをランニングに切り替えて急ぎ6Kmを走破する。 シャワーを浴びる…