先の記事で、応仁の乱を境に声聞師集団のパワーバランスが変化した可能性がある、と書いた。室町期に見られた幾つかの党が、戦国期の記録には見られなくなるのだ。 室町期に存在した有名な声聞師集団に「小犬党」がある。 相国寺の西、柳原に居住していたと思われる声聞師集団である。各種記録には「小犬党」の他、「唱門師小犬」「小犬太夫」「小犬座」などという名で登場している。この小犬党を率いていた者の名は、「小犬」である。これは個人名ではなく、小犬党を率いていたリーダーが、代々名乗っていた名前なのである。名を継ぐ、という点では、河原者の死刑執行人・天部又次郎と同じである。 この声聞師集団「小犬党」は、少なくとも1…