もくじはこちら登場人物 ●不知火〔二〕 ●不知火〔二〕 下総、布佐(現我孫子市)から松戸に向かう道は鮮魚(なま)街道と呼ばれていた。銚子でとれた魚は利根川をさかのぼって舟で運ばれ、木下(きおろし)河岸で陸揚げされ、大森、白井、鎌ケ谷、八幡、行徳から江戸日本橋の魚問屋に運ばれていた。しかし新たに布佐から松戸を経て江戸川を通り日本橋へ運ばれる道が開発され、次第に増えていった。松戸にその日の昼間、日本橋には銚子を出た翌日夜には荷が着いた。 そのルートの舟の中に猪狩芸州とタカとその妹タキがいて酒を呑んでいた。アヤメは縛られて牢に入れられていた。 縄抜けをしてタキを格子越しに蹴って身体を拘束し、アヤメが…