古典文法の深層へ──小西甚一『古文研究法』をめぐる精緻なる思索 宗像多紀理 一、はじめに 小西甚一の著書『古文研究法』(明治書院、1964年)は、古典文学・古典語に携わる者にとって一つの金字塔といえる存在である。とりわけ大学院レヴェルで古典文学を専攻する者にとっては、その言葉の背景に横たわる精神構造や論理の重層性を明らかにするうえで、この書は指南役として無視しがたい重みを有する。単なる語法の知識にとどまらず、日本語という言語体系の深層構造へと導かれる感覚は、本書の隅々にまで宿っている。以下、本書の構成と主題を整理しつつ、現代の古文研究における有効性を見極めながら、学生としての視点から精緻に読み…