【あらすじ というかダイジェスト】 母が少年を連れて帰ったお祖父さんとお祖母さんの家は、大きな川のほとりにあった。 母屋から桃畑を隔てた川土手の離れ屋で、少年と母との暮らしが始まった。 夜になると川の流れの音が、少年の耳を洗うように聞こえてくる。父と暮らしたかつての家は、町のざわめきが絶えず聞こえる繁華な港町だった。どんなに夜が遅くてもレールをきしませて走る電車のひびき、町かどのチャルメラ、わめき合う人聲や――そういった色々の物音が聞こえていたのだが、この離れ屋は、そんな物音がびったりと消えてしまって、そのかわり、サワサワと冷たく堅い布を揉むような水音しか聞こえない。 離れ屋で、母と二人だけで…