山下洪文監修『実存文学』(未知谷、2022) 詩人にして、大学では詩史と詩作の指導者でもいらっしゃる山下洪文さんが、ご一統のお力を結集して編まれた文叢。山下さんご自身の論文や研究調査を柱に、若い筆者たちによる詩・小説・批評が並ぶ。着眼秀逸の二大特集には、ことに眼を惹かれた。 反時代的な匂いがする、大仰な書名だ。すでにしてそれが本書の意図。 まずポストモダン以降の文学現況を、かように摑む。さまざまな先行思潮を解体・相対化したはいゝが、代るものが提唱されぬまゝだ。ために若者は、目星となる人間像も信頼できる規範もなしに、喪失感や自己不確定感をかこつほかない。 自己を視詰めよ。存在の根拠を問い直せ。か…