小高い山から見たある都市の風景 君あしたに去りぬゆうべの心千々に何ぞ遥かなる。 君を思うて岡の辺(おかのべ=丘のあたり、ほとり)に行きつ遊ぶ。岡の辺なんぞかく悲しき。 これは、誰の詩だろう。詩に詳しい人には常識だろうが、江戸時代の俳人で画家の与謝蕪村(1716~1784)の作なのだ。詩人の萩原朔太郎(1886~1942)は「この詩の作者の名をかくして、明治年代の若い新体詩人の作だと言っても、人は決して怪しまないだろう」(『ちくま日本文学全集 萩原朔太郎「郷愁の詩人 与謝蕪村」』)と書き、蕪村の斬新な発想に驚きを示している。朔太郎より前には正岡子規が蕪村を再評価している。蕪村の瑞々しい感性は、こ…