考える葉:松本清張 1962年(昭37)光文社刊、カッパノベルス。 この小説では主要人物が前半と後半とでガラリと入れ替わる構成になっているのがまず面白いと思った。(なぜそうなるのかはネタバレにもなるのでここでは自粛する)山梨県の身延山の西側に位置する有名な硯の産地雨畑(小説中では落石)で暮らしていた青年が知らず知らずのうちにある陰謀に巻き込まれる。彼は人生に生甲斐を見出せず、虚無的に生きていたが、その彼に親切に声をかけ、仕事を紹介する男とその妹に次第に親近感を覚えて行く。 考える葉:松本清張、小松久子・画 その先々で不審な殺人事件に次々と遭遇するうちに、終戦直後の混乱期に管理不明の軍需物資を利…