戦後初期の日中交流を分野別に見ると、演劇分野で注目されるのは千田是也、岸輝子、中村翫右衛門などが目についた。千田と岸はともに俳優座を結成した新劇の演出家と役者で、夫婦でもある。中村翫右衛門は前身座代表の歌舞伎役者で、戦後発足当初、団員ほとんどが日本共産党員であったという。新劇が左翼的な傾向を持つことはよく知られるが、前身座はそれとは更に一線を画していた。共産党に近かった劇団としてはわらび座があるが、これは後に秋田に移転したあたりからそうした色彩は失われたらしい。わらび座も訪中公演を行っている。 岸輝子が訪中したのは1954年10月の婦人代表の一員としてである。他の団員は婦人運動家や労組関係、医…