(びじんごろし)1896年(明29)駸々堂刊。探偵小説第10集。明治中期の探偵小説ブームで続々と刊行されたシリーズ本の一冊。この一年後には島田美翠は柳川と名前を変えて、言文一致体に切り替えている。この作品ではまだ叙述部分は文語体になっている。(下記参照) 若い娘の水死体が発見されるが、最初は身投げかと思われた。しかしその口の中に人の手の小指の一部が嚙み切られて入っていたのがわかって、警察の偵吏による事件の捜査が始まる。片手の小指が失われた人物を探す中で、偶然目にした人物や謎の手紙や待合茶屋の隣室の会話の立ち聞きなど、幸運に恵まれる捜査の進展に「そんな甘いもんじゃないはず」とつい思ってしまう。ミ…