ちょうど源氏が車に乗ろうとするころに、 左大臣家から、 どこへ行くともなく源氏が京を出かけて行ったので、 その迎えとして家司《けいし》の人々や、 子息たちなどがおおぜい出て来た。 頭中将《とうのちゅうじょう》、 左中弁《さちゅうべん》 またそのほかの公達《きんだち》もいっしょに来たのである。 「こうした御旅行などにはぜひお供をしようと思っていますのに、 お知らせがなくて」 などと恨んで、 「美しい花の下で遊ぶ時間が許されないで すぐにお帰りのお供をするのは惜しくてならないことですね」 とも言っていた。 岩の横の青い苔《こけ》の上に新しく来た公達は並んで、 また酒盛りが始められたのである。 前に…