命まで賭けた女(おなご)てこれかいな 無名の人の、知られざる1句。川柳の句集「有夫恋」が異例の大ベストセラーになった時実新子さんが、平成6(1994)年4月号の月刊誌「文藝春秋」に書いたエッセイで、取り上げている1句です。わたしは思わず笑ってしまいましたが、時実さんも思い出しては笑っていたらしい。そして、こう書いています。 この句は見れば見るほどあたたかい。 なるほど。言われた妻の方は怒り心頭か、苦笑いか。しかし、この句の笑いの底には、妻へのどっしりとした愛情が感じられます。 「巻頭随筆 百年の百選」(文藝春秋編)の、巻頭に置かれているのが時実さんのこの随想。思わず、部屋の書架のどこか奥に「有…