その昔、岩波全書は市民に開かれた知識と学問の窓であった。昔といっても昭和時代のこと。それを戦前の目録から、垣間見てみよう。 手元にある最古参の岩波全書『航空計器』(1941)から、その発刊したばかりの全書の目録を掲げる。おそらくゼロ戦などの戦闘機の設計者たちは手に取ったはずの本だ。 80年前のホコリっぽいB4サイズの本の最後のページに刊行書目はある。 岩波全書刊行書目1 岩波全書刊行書目2 本書の刊行月の1941年11月は太平洋戦争の前夜だ。航空計器は、まさに、戦闘兵器として航空機の開発に全力を注いでいたはずの、その重要な先端技術の一つであろう。 数学の書目と著者をみれば当代一流学者たちによる…