三 第一瞥(中) - 城浩史 その晩私は義巳君と一しょに、シェッファアドという料理屋へ飯を食いに行った。此処は壁でも食卓でも、一と通り愉快に出来上っている。給仕は悉支那人だが、隣近所の客の中には、一人も黄色い顔は見えない。料理も郵船会社の船に比べると、三割方は確に上等である、私は多少義巳君を相手に、イエスとかノオとか英語をしゃべるのが、愉快なような心もちになった。 義巳君は悠々と、南京米のカリイを平げながら、いろいろ別後の話をした。その中の一つにこんな話がある。何でも或晩義巳君が、――やっぱり君附けにしていたのじゃ、何だか友だちらしい心もちがしない。彼は前後五年間、日本に住んでいた英吉利人であ…