社会保険庁のデータ(年金記録)に、納付者が確定できておらず基礎年金番号に統合されていない過去の年金記録が約5000万件あり、そのうち60歳以上の約2,880万件の記録について年金の支給漏れの疑いがあるとされた諸問題。平成19年2月に明らかになった。
1997年に基礎年金番号が導入され、それまで並存していた厚生年金番号や国民年金番号が統合された。その際、加入者の申告(社会保険庁からハガキが送られ、過去に加入していた年金番号を記入し返信する形式)に基づき名寄せが行われ、順次基礎年金番号への統合が行われた。
しかし2007年の段階で、まだ統合・整理されていない過去記録が約5000万件あることが判明。5000件の多くは、まだ年金を受給していない人の年金番号や、受給資格を満たさなかったものが多いが、この中には現在受給中の人や死亡した人のものも含まれ、本来受け取れる年金額より少ない金額しか支給されていないケースや、本来受け取れる年金額より少ない金額の年金しか受け取らないまま死亡したケースがあり、特に問題視された。これを俗が「宙に浮いた年金」と呼ばれるものである。
また、納めたはずの国民年金保険料の納付記録が、社会保険庁のデータ(年金記録)や自治体の台帳になかったり、給料から天引きされていたはずの厚生年金保険料の納付記録(被保険者記録)が、社会保険庁のデータにないケースがあることが発覚。これが、いわゆる「消えた年金記録」である。
領収書や給与明細書などで証明できる場合は、年金記録の訂正が為されるが、証拠書類がない場合など、救済処置が施されないままになっている。
2006年6月18日衆議院厚生労働委員会で長妻昭議員が「宙に浮いた年金」問題を取り上げる。
2006年12月14日 民主党が「国民年金・厚生年金の納付した保険料の記録が消滅する事案等に関する予備的調査要請書」を衆議院厚生労働委員会に送付。
2007年2月17日 予備的調査の結果により納付者を確定できない国民年金や厚生年金の納付記録が、2006年6月現在、5095万1103件あることが明らかになった。
2007年3月1日 2006年8月21日から年末までの年金記録相談の特別強化体制期間中に納付記録の訂正要求をした方のうち、10,858人に対して要求を却下した。訂正要求を認めたのは領収書を保管していた86人の方のみであった。柳沢厚労相は86人の方の記録がどのように消えたのか、調査をして回答すると述べる。
2007年3月27日 柳沢厚労相、村瀬社会保険庁長官の答弁では、「宙に浮いた年金」の多くは、年金受給年齢に達していないか、納付期間が短く受給資格のない加入者のものとの説明であったが、2001年度から2006年度の6年間で、年金受給中のケースで218,474件の年金受給額の変更(裁定変更)があったことが判明。異議申立により、社保庁の保険料納付記録の名寄せが不十分で、納付記録の抜けなどが判明したケースがほとんど。5年で時効が成立し、それ以前のものは最低変更ができない問題も明らかに。
2007年4月8日 衆議院本会議で柳沢厚労相が「社会保険庁は受給者全員(約3,000万人)に過去の納付記録を確認するべき」と答弁。
2007年5月29日 与党は、年金記録が統合されず本来の年金額を受け取っていなかった場合に、時効をなくして差額を全部受け取れるようにする年金時効特例法案を議員立法で国会に提出。(5/30成立)
2007年5月30日 政府はマスコミ向けに「年金は消えていない」という趣旨のペーパーを配布。その際、一部例外的なケースとしてミスで記録が消えていることを認める。
2007年6月3日 政府は、社会保険庁や市町村に年金記録がなく、本人にも領収書等の証拠がない場合には、全都道府県にある総務省の行政相談窓口に設置する第3者委員会(弁護士や社会保険労務士等で構成)が年金を支給するかどうかの総合的な判断を示すとした。また、総務省に検証委員会を設置し、外部有識者が今回問題化した年金記録の管理・事務処理について、経緯、原因、責任等の検証等を行うとした。