いらっしゃいませ。 口元からこぼれる挨拶には ノーファンデ、赤みもなく淡い面影だけを見せていた。 けれど確かにその女(ひと)の‘‘生‘‘を感じさせた。 知り合いが経営している店を初めて訪れた日の出来事。 中に入った私は手招きを受け、カウンター席に座った。 午前11時を少し廻った。 舗装された通りに面した路面店。 湾曲且つ、曲線を生かしたアーチ状の窓。 煉瓦造りの外壁がやけに鮮やかでクラシカルに感じさせ 店内ではビジネスマンが軽食を摂っている。 コーヒーだけを頼み、新聞を読む人、待ち合わせをしたり、 たわいのない日常がそこにあった。 コーヒーを頼み終えたわたしは 目の前で行われる女の動きに、目が…