「それくらいのことでいばらせないぞ、 大将さんの引きがあると思うのかい」 などと言うのを、 供の中には源氏の召使も混じっているのであるから、 抗議をすれば、いっそう面倒になることを恐れて、 だれも知らない顔を作っているのである。 とうとう前へ大臣家の車を立て並べられて、 御息所の車は葵夫人の女房が乗った幾台かの車の奥へ押し込まれて、 何も見えないことになった。 それを残念に思うよりも、 こんな忍び姿の自身のだれであるかを見現わして ののしられていることが口惜しくてならなかった。 車の轅《ながえ》を据《す》える台なども 脚《あし》は皆折られてしまって、 ほかの車の胴へ先を引き掛けて ようやく中心…