《上・下巻あわせての評です》 『風の影』『天使のゲーム』『天国の囚人』に続く「忘れられた本の墓場」シリーズ第四部、完結編。バルセロナの地下に隠された本の迷宮を知る、限られた人々を語り手に据えたこのシリーズは、内戦からフランコ独裁政権というスペインの暗黒時代を背景に、史実を大胆に脚色し、作家偏愛のマネキンや人形の並ぶ倉庫や、廃墟、墓場や地下牢を舞台に仮面の怪人が登場する異色の小説世界。作品によって訳者のいう「青春ミステリー」、「幻想ゴシック小説」、「『モンテクリスト伯』風冒険譚」と、作風が変化してきた。 シリーズの狂言回しを務めるのが、フェルミン・ロメロ・デ・トーレスと名乗る大きな鼻をした痩せた…