不治の病に冒された男が人生に絶望し社会を憎悪する。奇跡的に病気は回復するが、闘病中に心の中で育まれた虚無と悪意は消えず、やがて同級生の親友を殺害する。殺害に至るまでの主人公の心の動きと、その後の数年の人生を、手記形式で描いた小説。なぜ主人公の「私」は親友を殺害したのか。闘病中に感じた虚無の正体は一体何だったのか。果たして「私」は殺人の罪に呵責を感じているのか。或いは感じていないのか。親友を殺害後も事件は発覚せず、一見平凡な生活を送るが、常に「私」の中には「自分は人殺しである」という事実が影法師のように付き纏う。さらに「俺は人殺しだ」と唐突に告白したい衝動に駆られたり、その瞬間に理性が働き告白す…