中井は1934年奈良県生まれ、2022年逝去、精神科医、専門は精神病理学 人類がまだ埋葬していないものの代表は戦争である。戦争を知る者が引退するか世を去った時に次の戦争が始まる例が少なくない。戦争の酸鼻な局面をほんとうに知るのは死者だけ。 戦争が「過程」であるのに対して平和は無際限に続く有為転変の「状態」である。だから、非常にわかりにくく、目にみえにくく、心に訴える力が弱い。平和は維持であるから唱え続けなければならない。 戦争における指導層の責任は単純化される。失敗が目に見えるものであっても、思いのほか責任を問われず、むしろ合理化される。指導層が要求する苦痛、欠乏、不平等は民衆が受容し忍耐する…