1934年奈良県生。京都大学医学部卒、東大分院神経科、青木病院、名古屋市立大を経て、神戸大学医学部精神神経科教授。97年退官、現在神戸大学名誉教授。精神科医。精神病理学者。臨床、研究(風景構成法の考案)、翻訳など多岐にわたる功績で知られる。また、広範な知識を背景とした明晰な文章家としても著名。
主な著書
訳書
詩の翻訳
2019年5月のブログです * 先日の遊戯療法学会で児童精神科医の滝川一廣さんのお話に感心をしたので、本棚の隅っこにあった滝川さんの『「こころ」の本質とは何か-統合失調症・自閉症・不登校のふしぎ』(2004・ちくま新書)を見つけ出して読む。 久しぶりだが、いい本だ。 統合失調症の発症の経過がとてもていねいに説明されて、中井久夫さんと同じくらいにわかりやすい。 幻聴の生じ方もよく理解できる。 自閉症に関しては、共同性という概念の導入で、こちらもとても理解しやすい。 自閉症が単なる発達の正規分布の一部であることも述べられて(いわゆる自閉症スペクトラムだ)、いたずらに原因追及をすることの弊害も説明さ…
サブタイトルは「変化するということ」 東畑開人氏は、旺盛な執筆活動を続けられている。臨床心理士で公認心理師、専門は、臨床心理学、精神分析、医療人類学。白金高輪カウンセリングルーム主宰。 現在私がもっとも信頼する、心理臨床、精神保健福祉に関する著作家である。 【ルソー『告白』】 冒頭、エピグラフは、ルソー『告白』からの引用である。『告白』は、元祖私小説とでもいうべきものだが、この書物は、東畑氏にとっての「告白」であるということだろう。 氏が、これまでの人生を振り返って、長く携わってきたカウンセリングというものについて、包み隠さず「よいこともわるいことも、おなじように率直に」書いた書物ということに…
■■■質問■■■臨床精神科医・中井久夫氏にまつわるキーワード: 狩猟採集民S親和者農耕社会権力機構の確立神を必要とする大地を傷つける農耕浄化は強迫性の証強迫的な農耕社会の中でS親和者は倫理的少数者となった。創造の病精神の病だけでなく、胃潰瘍を患った夏目漱石のように非メンタル系の疾患でも創造性の契機になる事例がある聞き役いのちへの信頼 これらのキーワード・観点を散りばめつつ、中井久夫氏の世界観や現代社会の問いかけるもの、そして回復についてAIさんの論説・解説をお聞かせください。 ■■■回答■■■精神科医・中井久夫氏の思想は、単なる医学の枠を超え、人類学的な深みと詩的な感性が融合した「いのちの学問…
2024年4月のブログです * 中井久夫さんの『精神科治療の覚書』(1982・日本評論社)をかなり久しぶりに読む。 中井さんの名著なのに、再読がすっかり遅くなった。反省。 中井さんが日々の精神科治療で経験されたことをすごく細やかに、ていねいに記されていて、勉強になる。 真摯な精神科医はこんなにもいろいろなことを考えて治療をされているのか、と本当に感心させられる。 それでいて、そこから患者さん中心の精神医学が立ち上がってくるさまが見えてくるようですごい。 例は違うかもしれないが、松田道夫さんの『育児の百科』を思い出す。 松田さんも、子どもの症状をていねいに細やかに記して、そこから親ごさんが安心で…
2020年4月の日記です * BS放送大学の、心理臨床とイメージ、を見る。 講師は心理療法・箱庭療法が専門の小野けい子先生(放送大学大学院在学中はたいへんお世話になりました)。 いつも途中から見ていたので、今回は新学期ということもあり、先週の第1回から見ている。 今日は第2回、表現療法ということで、なんとゲストが精神科医で遊戯療法家の山中康裕さん。 小野先生のインタヴューがお上手なこともあって、山中さんのいろいろな思い出話が展開される。 山中さんの若い頃のエネルギッシュな様子がうかがえて、とても面白い。 中井久夫さんや河合隼雄さんのお話も出て、勉強になる。 時に、山中さんが逆に小野先生にインタ…
中井久夫が2022年8月に亡くなった後、12月にNHK Eテレで放映された番組のテキストである。確か、4回すべてではないが、斎藤環氏が語る姿を観た記憶がある。 斎藤氏は、「はじめに 義と歓待と箴言知のひと」で、精神科医になって間もないころ目にした『中井久夫著作集』(岩崎学芸出版社)の1冊『分裂病』に触れて書いている(統合失調症は、当時、精神分裂病、略して分裂病と呼ばれていた)。 「一読して、圧倒されました。とてつもない教養と、あまりにも繊細な臨床眼、みずみずしくも重厚な文体。そのどれもが、それまで私が読んできたどんな学術書や小説にもないものであり、一つの論文にこれほど鮮烈な印象を受けたのは初め…
私は、どんな思春期を過ごし、どんな青春期を生きて、大人になったのだろうか? この文庫版のもとになった岩崎学術出版社の著作集の出版が1985年ということは、ほぼ40年前、私が30歳になる頃であり、高度成長が終わった頃であるから、まさしく私たちが、失われた青春を過ごした当事者である、ということになるのかもしれない。 【失われた緑と青春】 「高度成長は終わったが、そのバランスシートはまだ書かれていない。しかし、その中に損失として自然破壊とともに、青春期あるいは児童期の破壊を記してほしいものである。われわれは大量の緑とともに大量の青春を失ったと言えなくもない。」(p.68) しかし、私には児童期はあっ…
恐怖に終始する急性期もあれば、夢幻様体験が現れる場合もあります。また急性期の記憶には後から聞けばけっこう欠落があります。意識障害がないといわれますが、ほんとうのところはよくわからないのです。ものみなが非常に美しくみえることも、すべてが夢の中のようであることも、宙づりになったような感じも、「すべてがさかさま、あべこべになっている」と直観することもあります。世界が一望のもとに収まったという感じも、あらゆるものがいっせいに叫び出すという感じもあります。過去も未来も一またぎでその涯まで行けるという感じもあります。一瞬が永遠に、長い時間が一瞬に感じられもします。うっかり動いては危ないと直観することも、逆…
たぶん2018年ころのブログです * 中井久夫さんの『「伝える」ことと「伝わる」こと』(2012・ちくま学芸文庫)を再読しました。 おそらく3~4回目、単行本の時も含めると、数回は読んでいると思うのですが、なぜか今回も新しい発見が数多くあって(?)、新鮮な驚き(?)をたくさん経験できました。 記憶力がだんだんあやしくなってきているお年寄りの特権(?)です。 本の内容は中井さんのご専門の統合失調症や神経症の治療論が中心ですが、いずれもあくまでも中井さんご自身の体験に基づいた丁寧な治療のあり方を述べられていて、心理臨床に携わる者にもたいへん参考になります。 中でもじーじが今回、参考になったのが「意…
2017年5月のブログです * 5月の連休、昨年に続いて、東北3県の沿岸部を車で旅してきました。 国道6号線の沿線は、昨年より少しだけ帰還困難地域が減りましたが、しかし、規制解除になった地域でも、入り口がフェンスで閉鎖されているお店もあり、まだまだ大変な様子でした。 もちろん、帰還困難地域内は、当然、無人で、犬や猫の姿も見当たりません。その代わりに、獣注意、という看板が目立ちます。動物ではなく、獣(けもの)という表記が、異様な感じです。 また、あいかわらず、国道の交差道路には、警備員が通行止めの警戒をしています。盗難防止のためか、福島県警のパトカーも頻繁に行き来をしています。 今回も、じーじは…