永田和宏著『人生後半にこそ読みたい秀歌』にも挽歌が取り上げられています。挽歌の中でも、読む者の心を締め付けるのは、子の死を迎えた親の歌ではないでしょうか。次の歌は、本書のなかで数首挙げられている中の一首です。 笑ふより外はえ知らぬをさな子の あな笑うぞよ死なんとしつつ (窪田空穂『鳥声集』)二歳になる前の次女なつを失ったときの歌です。まだ話すことのできない幼子が、苦しみ続けたあとに、ふと親を見て笑ったと詠います。永田にとって大切な歌で、他の著書『人生の節目で読んでほしい短歌』では、「歌を作ることの業のようなものを否応なく考えさせてしまう」と評しています。永田の別の著書『あの午後の椅子』のなかに…