はじめに 手本にしたい短歌を見つけた 『羽と風鈴』嶋稟太郎 |短歌|書籍|書肆侃侃房 手にしたのは偶然だった。一読して、唖然とした。 しばらくは地上を走る電車から桜並木のある街を見た これは、短歌なのか? 赤い火がときおり起こるうなぎ屋の小さな窓を雨の日に見た 口語定型は間違いない。だが、短歌としての飛躍は? 発見は? 技巧は?詩情はあるか? 厚紙を二つに折った縦長の春のメニューに日が差していた こうした作品が続く。歌集一冊全てがこの調子の短歌で埋め尽くされていたら……わたしは空恐ろしさを覚えていた。 共依存 こうした短歌を目にして、パニックを起こしながら、わたしは正岡子規の以下のような短歌を…