私の暮らす町には、坂がない。階段も、ほとんどない。どこへ行くにも、平らな道が続いている。 便利だと言う人も多い。たしかに、移動はしやすい。年配の方も、自転車や車があれば日常生活に困ることはない。けれど、あるときふと気づいた。この町では、人が歩かない。 正確には、歩こうと思えば歩ける。けれど、歩いても身体が鍛えられるような地形ではない。起伏がなさすぎる。負荷がない。歩いているのに、何もしていないような感覚になる。 買い物も、通院も、車で済ませる。徒歩3分の距離でも、ドアtoドアで車に乗る。それが日常の風景になっている。 その結果、「最近、足が上がらなくてね」と言う声をよく聞くようになった。 他人…