歌人、永田和宏の対談集『寄り添う言葉』(インターナショナル新書)は、伴侶を失った者どうしが、その悲しみをどう受け止め、どのように乗り越えることができたのか、について語り合ったものです。対談のなかで何度か言及された、妻、河野裕子の終末期に「ありきたり」の言葉をかけなかったという歌人としての矜持と、ありきたりな言葉でも届けるべきだったという伴侶としての心残りの、引き裂かれるような姿には、痛ましいものを感じました。さて、この本はホスピスケアを行う徳永進医師との対談で結ばれています。その対談の中で、徳永医師は永田和宏の専門分野である細胞生物学を引いて、次のように問いかけています。 “人間が一つの食細胞…