米原万里さんの文章が好きだ。読後感が気持ちいいのだ。ノンフィクションの「噓つきアーニャの真っ赤な真実」しかり、通訳論とも言える「不実な美女か貞淑な醜女か」しかり、彼女の文章は切れ味が良く、説得力があり、ユーモアもあるので、高揚させられるというか、はまるのだ。 「真夜中の太陽」は、20世紀と21世紀がまたがる2000年前後に書かれたものが多い。取り上げている事柄は当然古いのだが、世の中の本質があまり変わっていないのか、いまだに頷ける部分が多い。この本は、雑誌や新聞に書いたエッセイをまとめたもの。亡くなって随分経つからあえて書くが、米原さんはロシア語の同時通訳であり、物書きとしてもエッセイやノンフ…