初期の作品で、大好きな小説。 やっぱり絶望的な主人公が、絶望しか見い出せないような日常の中で、散歩をしている。「ふと」映画館に入ろうと思う。この「ふと」が、気に入って、映画館に入る。 スクリーンの前のほうで、落花生か何かを食べながら鑑賞しているひとりの女性が目につく。 映画館を出て、駅へ向かう。駅に着く。寒い。吹きつける北風をしのぐために、ホームの下の階段で、電車が来るのを待つ。 そこで主人公は、またあの映画館で落花生を食べていた女性を見た。 そういえば、自分が散歩をしていた街なかで、ある事件が起こった時、ヤジウマしていた自分の後ろにも、あの女性はいた。 上り電車が来る。下り電車も来た。女性は…