もともと、二十歳前後の、しかも女性が書いたアイドル追っかけ小説に、わたしがついていけるはずもない。第164回芥川賞を獲得した「推し、燃ゆ」(宇佐見りん、河出書房新社)です。 同年代のみなさんのために少し事前解説すれば、「推(お)し」は動詞ではなく名詞で、分かりやすい言葉に言い換えるなら「人気アイドル」。「燃ゆ」は、実際に炎や煙が立ち上る意味ではなく、SNSにおける炎上のことです。 ディープな追っかけ小説、芸能人オタクの世界を、誰もが分かる言葉で描き出してあって興味深くはあるのですが、それだけなら途中で放り出したと思います。「最後まで読まなくても、もう分かったよ」と。ところが自分と縁もゆかりもな…