題知らず たちかへり かなしくもあるかな わかれては しるもしらぬも けぶりなりけり たちかへり 悲しくもあるかな 別れては 知るも知らぬも 煙なりけり 題知らず 振り返っては悲しい気持ちになることよ。死に別れてしまうと、知っている人も知らない人も、みな、煙になってしまうのだ。 第知らず、つまり詞書のない歌が二首続きます。 第五句「けぶり」は、ここでは火葬の煙で、それゆえ、第三句の「わかれ」が死による別れであることがわかります。第三句・第四句「わかれては しるもしらぬも」のフレーズが印象的。百人一首(第10番)の蝉丸の歌が思い浮かびますね。 これやこの ゆくもかへるも わかれては しるもしらぬ…