敦慶の式部卿の女、伊勢の御の腹にあるが、近う住むところありけるに、折りて瓶にさしたる花をおくるとてよめる ひさしかれ あだにちるなと さくらばな かめにさせれど うつろひにけり 久かれ あだに散るなと 桜花 かめにさせれど うつろひにけり 敦慶の式部卿と伊勢の間の娘が住んでいるところが近くにあり、折って瓶に挿した花に添えて贈った歌 長くさいていなさい、むなしく散ったりするなとの思いを込めて、桜の花を「亀」ならぬ「瓶」に挿したけれども、千年のときを経ることもなく、散ってしまったよ。 「敦慶の式部卿」は第59代宇多天皇の皇子敦慶親王で、伊勢との間の女(娘)は「中務(なかつかさ)」。090~096 …