雪国の風を感じながら、母と話す。久方ぶりの母の声。一番娘を知る母の声。娘の志を普通だと母は笑う。姉弟揃って総理大臣を目指すなんて、バカだねと優しく笑う。変な日本語を使うなと叱られもした。私は嬉しい。電話口には、本来の姿をした器の大きな母がいる。 能力はとにかく隠せと言われて育ったから、本来の自分はひた隠しにして生きてきた。自分を隠して生きた者だけが分かることがある。人は相手に「こうあってほしいその人像」を重ねている。表面に出ているその人が「その人のすべて」と思い込み過ごしている。あまりに綺麗に隠せるものだから、今の私を知るのは一握りもいない。 世のほとんどの人は知らないであろう。人の本質は「眼…