秋の夜の 月毛の駒《こま》よ 我が恋ふる 雲井に駈《か》けれ 時の間も見ん 入江の月夜が美しい夜。紫の上が恋しい源氏🌊(源氏の君の歌) 〜秋の夜の月毛の駒よ、わが恋する都へ天翔っておくれ 束の間でもあの人に会いたいので 【第13帖 明石 あかし】 風流がりな男であると思いながら源氏は 直衣《のうし》をきれいに着かえて、 夜がふけてから出かけた。 よい車も用意されてあったが、 目だたせぬために馬で行くのである。 惟光などばかりの一人二人の供をつれただけである。 山手の家はやや遠く離れていた。 途中の入り江の月夜の景色が美しい。 紫の女王《にょおう》が源氏の心に恋しかった。 この馬に乗ったままで京…