暗くなってから着いた二条の院のはなやかな空気は どこにもあふれるばかりに見えて、 田舎に馴れてきた自分らがこの中で暮らすことは きまりの悪い恥ずかしいことであると、 二人の女は車から下りるのに躊躇《ちゅうちょ》さえした。 西向きの座敷が姫君の居間として設けられてあって、 小さい室内の装飾品、手道具がそろえられてあった。 乳母の部屋は西の渡殿の北側の一室にできていた。 姫君は途中で眠ってしまったのである。 抱きおろされて目がさめた時にも泣きなどはしなかった。 夫人の居間で菓子を食べなどしていたが、 そのうちあたりを見まわして母のいないことに気がつくと、 かわいいふうに不安な表情を見せた。 源氏は…