『新編 百花譜百選』 木下杢太郎 画/前川誠郎 編 岩波文庫 東京帝国大学出の皮膚科医で、詩人、劇作家、翻訳家、美術史・切支丹史研究家という多岐にわたる業績を持つ木下杢太郎氏。 その木下氏が、最晩年の昭和18年3月10日から昭和20年7月27日までの間、描き続けた植物図譜が『百花譜』である。総計872点からなるという。 『百花譜』は、植物図鑑・植物画集であるとともに、歴史的資料とも考えられる。 ほぼ毎夜灯火の管制がなされていた太平洋戦争最中の東京で、描かれていたという事実を知らなければ、なぜ、あまり絵を描くのに適さない便箋を用いているのか、不思議に思っただろう。 否、実際に空襲なども間近で起こ…