きつつきもいほはやぶらずなつこだち 元禄2年(1689)4月5日の作。芭蕉は、黒羽城から十二キロほど東にある臨済宗妙心寺派の東山雲巌寺を参詣した。雲巌寺は、大治年間(1126〜1131)叟元和尚の開基で、その後、弘安6年(1286)に仏国国師(後嵯峨天皇第三皇子)が再興し、併せて、北条時宗の庇護もあり、千人余の雲水が修行する大寺院となり、筑前・聖福寺、越前・永平寺、紀伊・興福寺と並ぶ日本四大禅宗道場の一つとして隆盛した名刹である。雲巌寺は後ろに八溝山が控え、前には武茂川が流れ、佳景寂寞とした境内には十景と呼ばれる景勝などもあり、禅宗道場として素晴らしい環境にある。現在でも仏道修行の法統が受け継…