町の片隅にある一軒の小さな古書店「夏木書店」。 床から天井に届く書架を、世界の名作文学や哲学書がぎっしり埋めています。売れ筋の人気本や雑誌などは一切置かずに、「これで経営が成り立つのか」という店です。細々と店を営んできた祖父が急死しました。 残されたのは孫の高校生・林太郎。両親は離婚し、母が若くして他界したため、小学生の頃から祖父に引き取られて2人で暮らしてきました。 「本を守ろうとする猫の話」(夏川草介、小学館文庫)は、そんな冒頭から物語が始まります。 林太郎に遺されたのは、負債ではないけれど、遺産とも言えない小さな古書店でした。祖父が林太郎に遺したのはもう一つ、本を愛する心です。こう言って…