1941年、東京生まれ。 中央大学法学部卒。 時事通信社を経て自分は無料相談業につこうと決意し、1971年現代職業研究所を設立。 以来、執筆・講演・中小企業診断士などの活動で生計を立てながら、一万数千人の相談を無料で受けてきている。内向型人間のカリスマと呼ばれている。 著書に、『話べたな人の自己表現の本』(成美堂出版)、『気持ちの切り替えがうまいひと』(成美堂出版)『内気な人の生き方にはコツがある』(PHP出版)等がある。
本多信一さん(1941~)という人がいます。1970年代から40年以上、職業・キャリアのことで悩む個人を対象に無料の相談(「職業無料相談」などと本多さんは呼ぶ)を行ってきた人です。ただし、現在は相談の仕事は休業となっているようです。 「無料」の相談でどうやって生きていたのか? 本多さんは生き方や仕事に関する著作を40年余りのあいだに数十冊書き、さらに講演や企業へのコンサルティングなどで収入を得てきました。 しかし「無料相談」の事務所の維持費がかさみ、ずっと「貧乏」であったとのこと。 *** 本多さんは大学を出てから6年間は、時事通信社で記者として勤務しました。1971年、30歳のときに独立して…
HSPに効く本 本多信一『人生が変わる お金と会社にしばられない生き方』(PHP、2013年)は、職業相談をライフワークとする現代職業研究所の著者が「お金にこだわらず、自由に生きる」ヒントを教えてくれる本です。 読者対象は特に限定していないようですが、私が思うに、本多さんの言葉に反応するのは主に内向型人間ではないかと思います。奥付の著者プロフィールを見ると、現代職業研究所は内気で悩む人のために作られたものなので、本書の中心的読者もたぶんそうでしょう。ちなみに内向型人間は、今でいう繊細さん=HSPだと私は思っています。 私が最初に読んだ本多さんの本はたしか『内向型人間の仕事にはコツがある』(大和…
口八丁が嫌 本多信一『人生が変わる お金と会社にしばられない生き方』(PHP、2013年)に、こんな箇所があります。 いろいろな会社に赴いてさまざまな人たちを観察すると、やはり、「ウソのつけない正直な人」が伸びているといえます。もちろん二十代、三十代のころは“口八丁、手八丁”のパフォーマンス型社員が伸びますが、四十代、五十代になると、“正直もん社員”が同僚や上司からの尊敬を集めて、グーっと伸びる例が目立ちます。 上記はもちろん本多さんの体験に裏付けられた実感なのでしょうけれど、本当だとしたら嬉しい。私はチビの頃は嘘ばかり吐き、口八丁でやっていましたが、やがて嘘がつけない性格になっていったように…
老成し、なおかつ幼稚 本多信一『人生が変わる お金と会社にしばられない生き方』(PHP、2013年)を読んでいます。タイトルそのまま、お金や会社に縛られずに生きる考え方や行動の仕方について、本多さんが実体験を元に紹介している本です。 目次を見ながら、読みたいと思ったところをぱらぱらめくって読んでいますが、「第3章 低い視線で生きよう!」の中に「『計らわぬ生き方』に思わぬ『幸運』がある」という節があり、面白い箇所がありました。 本多さんは中央大学法学部卒ですが、大学など意味がない、入りたくもない、と思っていたらしく、高校の同級生と大学受験について語ったことはなかったそうです。 私はつねに「同世代…
本多信一『内向型人間の生き方にはコツがある』 大和出版 1988年 私がまだ10代の学生の頃に感銘を受けた本について紹介します。私は20年程前に購入しましたが、初版は1988年と30年以上前に出版された本です。 [概要] 著者の本多信一さんは、1941年生まれ。1971年に現代職業研究所を設立し、相談業務に携わっていました。この本が出版された当時は47歳ですが、2022年3月現在は80歳ですね。 自分の生涯は、人生問題に悩み苦しむ人々のため、内向型で学校・社会に合わずに絶望しつつ生きる仲間のために、ほんの少しでも役立つようにしようー17歳のある日、私はそう決心した。(P.3) 本多さんは神経質…
具体的なステップとツール 堤ゆかり『もう内向型は組織で働かなくていい』(世界文化社、2020年)を読みました。著者は内向型コンサルタント・心理カウンセラーで、本書は、内向型の気質を持つ人に向けた、組織で働かなくてもいい道を案内するものです。 「内向型」に向けた本というと、私は本多信一さんの本が思い浮かびます。内向型人間はHSPと重なるところが大きいと思いますが、私自身がその傾向を色濃く持っているので、勉強のためにほとんど手当たり次第に読んでいます。 本書は本多さんの本ほど啓発寄りではなく、組織に属さず生きていく術を、ツールの紹介を交えて具体的に述べています。本書によると、内向型にとっての理想的…
「意識低い系のススメ」 本多信一先生の『がんばらなくてもいい』(こう書房、2009年)を読んでいます。先生は現代の悩める職業人の味方で、数多の人の職業相談に乗ってきた人ですが、私は先生のいう「内向型人間」、今風に言い換えるとHSPへの助言を、その著作を通して読み続けています。 さて本書は、タイトルのとおり「がんばらなくていい」ことを勧めるもので、サブタイトルには「ほっとする老子の本」とあります。成功を得るためにあくせくと仕事に忙殺され、消耗される生き方でなく、道教の老子のように、水のように流れて生きる生き方を説いています。いうなれば「意識低い系のススメ」のような本でしょうか。 忙しさも適度がい…
新しい縁の形 金子郁容『ボランティア』(岩波新書、1992年)を読んでいます。 人助けとか無償の奉仕活動をして良い気分になりたい、というわけでは全然ありません。ボランティアに興味が湧いたのは、先日、地元で一日だけのボランティアに参加したのを機に、本書のサブタイトルである「もうひとつの情報社会」というキーワードが頭に浮かんで、面白いなぁと思ったのです。 本書の趣旨は、情報洪水の中で無力感や焦燥感に包まれる現代社会にあって、ボランティアはそれを変える手掛かりになるかもしれない、というものです。つまりボランティア活動とそのネットワークが「もうひとつの情報社会」ということだと思います。 昔はそれほどで…
人間の悩みは変わらない 毎日、少しずつ読み進めている曽野綾子『心に迫るパウロの言葉』(新潮文庫、1989年)。ユダヤ教から回心してキリスト教の伝道に生きたパウロが残した言葉をめぐるエッセイですが、曽野の筆致は、あくまで冷静な作家のそれであり、だから読み応えがあると思います。 「『人間の日』と『主の日』」という章は、「さばきは神の事である」というサブタイトルがついています。この「事」は、「仕事」と言い換えてよさそうです。人間世界の悪に対し、人々は人間の法廷で裁く。それが「人間の日」で、それに対する「主の日」は、平たく言えば「最後の審判の日」であり、あらゆる行動と事績の最後の総決算で、これは神が担…
今回は断らなかった 私の知る人の中に、勤め先で役職がついた人がいます。その人自身は、自分に「役職がついてしまった」と思っているようです。。 「ついてしまった」などと書くと恥ずかしいことをしてしまったように思えるでしょう。実際その人は、自分に役などついていいのだろうかと、どこか後ろめたい感じがしていて、かなりのぎこちなさを抱いているようです。 その人は元々、会社で出世する人間を馬鹿にしていました。いや、有り体に言うと、かなりの根っこの部分に個人主義的な考えを持っているのは今も変わらず、組織の中で役など背負うにふさわしい人間ではないと自覚しています。 その人の会社では、べつに無理に出世しなくてはな…
意識的な欲の充足 武田友紀『「繊細さん」の幸せリスト』(ダイヤモンド社、2020年)を読んでいます。恐らくHSPである私は、HSP関連本、また本多信一さんの「内向型人間」に向けた啓発本をよく読んでいます。HSP=繊細さんと位置づける本書も、その一環で手に取りました。 本書は、文字通りHSPが毎日幸せを感じて生きていけるよう、さまざまな助言をする内容です。ここではHSPには六通りの幸せがあるとしています(感じる幸せ、直感の幸せ、深く考える幸せ、表現の幸せ、良心の幸せ、共感の幸せ)。 その第1章「感じる幸せ」には「思いっきり「欲」を出していこう!」という節があり、こうあります。 欲を禁じていると、…
安易に辞めるべきではない 先日から拾い読みしている本多信一『会社を辞めて「成功した」50の生き方』(ぶんか社、2002年)。その「はじめに」に、次のような箇所がありました。 自分の生きる人生は自分でデザインしなくてはならない。デザインがはっきり決まっていない勤め人男女は、辞表を出すのを待つべきだ。仕事上の苦痛にも今しばらく耐えてほしい。生きるためには何でもやってみる精神が必要だけれど、できれば目標にそった転職、独立をしてほしいと思う。 本書は元々、会社を「辞める」ことを念頭に置いて書かれていますが、本多さんとしては安易に辞めることはお勧めせず、そういう辞め方は良くないと釘を刺しているわけです。…