ぼけた人がその人のままで生きていく社会ってどんな社会だろう。 この問いがいつも胸の片隅にある。 『ぼけと利他』(伊藤亜紗・村瀨孝生/著、ミシマ社)を読んだ。 この本は、美学者の伊藤亜紗さんと「宅老所よりあい」代表の村瀨孝生さんの往復書簡だ。 この本にひかれたのは、伊藤さんの「はじめに」の文章を読んだ時だ。 “(略)「ぼけ」という言葉について。一般には「認知症」と呼ばれることが多い現象ですが、加齢とともに現れる自然な変化であるかぎり、病気ではない、と村瀨さんは言います。(略)本書では、「病気ではない、正常なこと」というニュアンスを込めて、「認知症」ではなく「ぼけ」という言葉を使っています”(p.…