街路樹のハナミズキが赤い実をつけ、黄色く色づいていた葉はさらに深みを増して紅葉し始めている。どんよりと暗い空が広がり、時折ざっと雨が降る日暮らしに、思い出して種村季弘の『雨の日はソファで散歩』を取り出した。 種村季弘の名を知ったのは、画家・装幀家として活躍する司修氏がまだ20代半ばだった頃のエピソードを紹介した「読書の伝道師」の中でだった(『読書の腕前』収 岡崎武志)。 ー 絵描きだけでは生活できずに、桃源社という出版社で駅売りの新書版小説本の表紙絵を描く仕事にありついた。原稿料を小切手で受け取るとき、会計係のおばさんは、司青年に社の新刊本をくれた。その時ひとこと本のことに触れて喋り、「読んで…