業柱抱き (新潮文庫) 作者:車谷 長吉 新潮社 Amazon 『業柱抱き』車谷長吉著を読む。 「私小説は自己の存在の根源を問うものである」と述べる作者が、いかにして私小説を書くようになったか。あるいは、いかにして私小説作家になったかをめぐる随筆集。 仕事の合間に沸沸と心の奥底に沸き上がるものを、言葉にしては、書いては消し、消しては書いて。穴の開くほど推敲を重ねて出版社に投稿、やがて雑誌に掲載される。望外のことで狼狽する。作家の肩書きをもらい、文学賞ももらって、最も困惑しているのは当の本人。その辺りの心境が赤裸々に綴られている。 「私小説は、人に忌まれ、さげすみの標的にされて来た。そのような言…