火葬国風景:海野十三 1935年(昭10)春秋社刊。 海野十三(1897~1949)は昭和初期から終戦直後にかけて活躍したが、当初は探偵小説家としての作品が多かった。この一冊は単行本としての四番目の作品集で、表題作「火葬国風景」の他に8篇収められている。「火葬国」は空想力を掻き立てられる中篇で、火葬場の窯の先に隠された世界の物語という着想は強烈な印象を与えてくれる。彼の言葉に「同時に奇想天外なる型の探偵小説も書いてみたいといふ熱情に燃えてゐる」とあるように、奇想天外の要素が彼の持ち味であり、魅力でもある。他の作品中には帆村荘六(ほむら・しょうろく)という私立探偵をしばしば登場させており、これは…