🌸夕顔の花の女君【源氏物語 35 第4帖 夕顔 1】 源氏が六条に恋人を持っていたころ、 御所からそこへ通う途中で、 だいぶ重い病気をし尼になった大弐《だいに》の乳母《めのと》を 訪ねようとして、五条辺のその家へ来た。 乗ったままで車を入れる大門がしめてあったので、 従者に呼び出させた乳母の息子の惟光《これみつ》の 来るまで、 源氏はりっぱでないその辺の町を車からながめていた。 惟光の家の隣に、新しい檜垣《ひがき》を外囲いにして、 建物の前のほうは上げ格子《こうし》を 四、五間ずっと上げ渡した高窓式になっていて、 新しく白い簾《すだれ》を掛け、 そこからは若いきれいな感じのする額を並べて、 何…