幼稚園にあがる前の私の記憶に出てくるのは、母よりも祖母だ おんぶされて散歩にいったのも 「しんびょうまてまて」と寝る前に、枕元でお話をしてくれたのも 私が近所の家にあがりこんで、ちゃぶ台に載ってたお漬物を食べたことを笑ったのも 母ではなく、祖母だった 母は近所の電気器具屋かどこかで、働いていたらしい 数年前に、思い立って父に「どうして初めての子供の私をおばあちゃんに任せて、ママは働きに出たの?」と尋ねた 返事は「家に、女手はふたつ必要なかったから」 ハイカラな街、函館で、商いをする家に生まれて、乳母日傘で育ち、私立の女学校で人気者だった、美人でスタイルも抜群だった母 高知の片田舎で、貧乏ながら…