第165回芥川賞候補の『氷柱の声』の作者、くどうれいんさん(長い文章の時はひらがな表記、短歌・俳句の時は漢字表記)の第一歌集『水中で口笛』と、エッセイ集『うたうおばけ』を読んだ。 短歌の題材が、身の回りのもので、それがとても自然で、素敵に思えた。まずは、目の前にあるものを詠む。架空の恋歌の嘘っぽさみたいなものがない、というか。 お酒の名前が鳥の名前みたい、とか、他愛ない会話から生まれるような歌が良いなと思った。同郷の石川啄木が亡くなった年齢までに、歌集を出したいと思ったそうで、高校時代から26歳までの歌が収められている。嘘っぽさがないのは、ここに掲載されている以上に、ものすごくたくさんの歌を詠…