限界ニュータウン 作者:吉川祐介 太郎次郎社エディタス Amazon 数年前、東京で高校時代の友人と歓談したときのこと。帰省した折にわざわざ私の実家がある集落を車で通り抜けてみたらしい。「いいところだね」と言う。お世辞を言い合う間柄ではないから本当にそう思ったのかもしれない。 18歳で上京して以来、故郷の佇まいの変化に大して気をとめることもなかったのだが、近年、新しく建て替わる家々が目につくようになった。年老いた両親のために車を運転すべく実家に居を移して3年が過ぎ、あらためて集落を見渡してみると、どこの家でも年寄りたちが庭木や花の手入れを欠かしていないことが四季折々の彩りを通して窺われる。人に…